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七つの顔

 一九四六年に大映で公開されました。監督は松田定次で、脚本は比佐芳武です。

 ある劇場で歌手のみどり『轟夕起子』が誘拐された。その際ダイヤの首飾りが奪われたのである。
 その事件に多羅尾伴内『片岡千恵蔵』がしゃしゃり出た。彼はみどりの証言で誘拐された家を特定した。
 その家の主は野々宮信吾『月影龍之介』だが、伴内は彼が犯人ではないと推測する。
 そして事件の裏にはある陰謀が隠されていたのであった……。

 とても面白い作品でした。終戦の翌年に作られたとは思えないほどの出来です。
 片岡千恵蔵氏は多羅尾伴内だとなんとなく貧相な印象があった。
 それが藤村大造になるとかっこよくなるのが不思議でしたね。
 前半はサスペンスで、後半は銃撃戦にカーチェイスといった豪華さだった。

 もちろんおかしな点もある。最終決戦で伴内は足手まといな女性陣を見学に連れてきたのだ。
 人質にはならなかったが、どうにも緊張感が欠けていると思う。
 だが華やかな女優陣で彩られているので、これはこれでありだと思った。

 多羅尾伴内が変装を解くシーンがある。付け髭に、メガネ。眉毛とかつらを取るが全く変わらない。
 それは容姿だけだが、雰囲気が変わった気がします。
 これは片岡氏の演技力でしょう。口調も変わり、さわやかになってましたね。

 この時代はGHQの命令で時代劇が撮れなかったのです。
 その代わりに現代劇が作られたそうだ。横溝正史原作の本陣殺人事件が映画化されたのもそれだ。
 同じ人が死んでもサスペンスなら許可されたらしい。代わりに題名に殺人事件はご法度だったという。
 なぜ横溝正史を引き合いに出したかというと、その作品に片岡氏が出演していたからです。
 さらに脚本も同じ人で、原作とは違った展開になったそうですね。

 はっきり言えば現代では受けない作風です。主役は美形ではないから。
 ですが片岡千恵蔵という大物が活躍する様は新鮮に映ります。
 新しいものを作るには、古典を参考にすることが大切です。若者たちにぜひ見てもらいたいですね。
 
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